二人の師匠

師匠は二人いるといいといつか、あるお客様がおっしゃっていた。

違う分野の事でもそれぞれに聞く事が出来るからということだった。

私には、師匠と心に思う方が二人います。

京都には山の手倶楽部顧問、栁忠志先生。

埼玉熊谷にはバーセントジェームズ代表、谷知典氏。

栁先生には、今から11年前に初めてお会いしました。

元々、妻が栁先生の授業を受けてワインアドヴァイザーの試験に合格したご縁もあり、当時、埼玉熊谷でバーを任される事が決まっていながら、すっかり自信をなくしていた私を連れて行ってくれました。

その時に、栁先生にいただいた言葉に勇気をいただいた言葉は

「どんなワインにも舞台に出る瞬間がある。最高の舞台に出してあげるのがソムリエの仕事。」

私には、ずっとその言葉が心に焼き付いて離れない言葉です。

また自分自身に置き換えて考える事もあり、サーヴする上でもいつも考えさせる場面が来る言葉でした。

初めて会ったのに沢山のアドヴァイスをいただき、帰り際遠く離れた曲がり角まで見送っていただいた光景が忘れられず、熊谷でバーを任された時にはどんなに忙しくてもドアまでは必ずお見送りをしようと心に決めました。

その後栁先生には2007年1月に再会する事ができました。

私が働いていた前職 ワイングロッサリーの吉田妙子社長が1年間、私を含め六角のワインバーの福村シェフと岡田ソムリエと一緒にワインとサーヴィスの授業を受けさせていただきました。

その1年間にも数々の珠玉の言葉をいただき、今の私の根幹を成す所となっています。

1番圧巻だったのが、1年間の授業終了のご褒美に、栁先生が主催する山の手倶楽部に会員である吉田社長に3人連れて行っていただいた事です。

あの日の光景、そして栁先生にはの一挙手一投足、食事が始まる前から食事が終わり帰るまで夢のような体験でした。

シャンパーニュのボワイエで受けたアペリティフからディジェスティフまで、楽しめたあの体験と匹敵する1日でした。

先生の所は基本的に1日1組なのでそれ以上かもしれません。

真の意味の贅沢、心遣い、そして栁先生の包み込むようでしなやかで美しいサーヴィスは今もずっと自分の理想です。

 

2000年9月に埼玉熊谷市でラミデュヴァンセントジェームズを任される事となり、2006年1月まで勤めさせていただきました。

その時のオーナーが今は、セントジェームズ企画代表の谷知典さんです。

バーを営んでいく事の一番大事な事を教えていただきました。

一番重要なのは、毎日の掃除でありそれが、ミリ単位の積み重ねとなって大きな力になると何度となく教わりました。

カクテルの作り方も自ら率先し教えてくれて、他の店舗のバーテンダーにも惜しげなく一緒に勉強会をしたりもしました。

何度か、オフの時に妻と飲みに行き、満席時に一人でオーダーを次々とこなしカクテルを作っていく様は本当に見事でした。

非常にキレがあり、日本刀のように鋭い動作で空気を集め、的確にサーヴする光景が今も目に焼き付いています。

また、カウンターのワックスを自らかけてお店を育てていく事も谷さんから教わりました。

2009年の春に谷さんが現場に出られていたバーセントジェームズにごあいさつに行った時、13年目にさしかかろうといている店内が凄みと重厚感を増していました。

特にカウンターが年月の他に、毎日ふき掃除を続けてきたからこそ出せる風格に満ち溢れて、感動しました。その後に行った私が働いていたラミデュヴァンセントジェームズも後を受け継ぎ、独自の世界を築き、熊谷で愛されている東森正博君が頑張っていて、ここの1枚板のブビンガのカウンターも素晴らしく風格が出てきていました。

ラミデュヴァンセントジェームズでの5年間は、間違いなく私の根幹をつくっています。

 

二人の師匠からいただいた言葉、珠玉の体験はこれからもこの仕事をずっと続けていく上でかけがえのない財産です。

お二人に感謝し、まだまだ未熟な自分を反省し、これからもいつもゼロ地点からのスタートと思い頑張っていきます。

 

 

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